※当ページは広告(PR)を含みます。本記事は一般情報提供を目的としたものであり、個別の受給可否を保証するものではありません。制度の最新情報は必ず公式窓口でご確認ください。
私自身、適応障害で潰れるように会社を辞めたあと、SNSで「退職給付金サポート」の広告を何度も目にしました。「最大○百万円受け取れる可能性」「まずはLINEで無料診断」。正直に言うと、最初の感想は「怪しい」でした。お金も体力も残っていない時期に、こういう広告だけは元気に追いかけてきます。だからこそ放置できず、制度の仕組みから業者の料金体系まで、自分で調べ尽くしました。
この記事は、その「怪しいと思って調べた側」の私が、結論と見分け方を整理したものです。
結論:制度自体は実在する。ただし業者には当たり外れがある
先に結論をまとめます。
- 「退職給付金」と呼ばれるお金の正体は、主に傷病手当金と失業保険(基本手当)という実在の公的制度。謎の特別な給付金ではない
- 申請サポート業者の存在自体は違法ではないが、質に大きな差があり、悪質なものも混ざっている
- 制度の申請は本来無料で、自分で申請できる人も多い。使うかどうかは「自分の状況」で決めればいい
「怪しい」と感じたあなたの感覚は、間違っていません。ただ、その感覚だけで制度そのものまで遠ざけてしまうと、本来受け取れるはずのお金を取りこぼします。私は辞めた当時この制度をよく知らず、あとから「知っていれば」と後悔した側です。順番に整理します。
「退職給付金」の正体は、主に傷病手当金+失業保険
広告では「退職給付金」とひとくくりにされますが、実体は次の2つの公的制度の組み合わせです。
| 制度 | 中身 | 窓口 |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険の制度。業務外の病気・けがで働けないとき、連続3日の待期のあと4日目から支給。金額はおおよそ直近12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2で、支給開始日から通算1年6ヶ月まで | 加入している健康保険(協会けんぽ等) |
| 失業保険(基本手当) | 雇用保険の制度。「働ける状態で求職中」の人が対象 | ハローワーク |
ポイントは、この2つは同時には受けられないことです。傷病手当金は「働けない人」、失業保険は「働ける人」の制度だからです。働けない間はハローワークで受給期間延長(最長3年)の手続きをしておき、回復後に失業保険へ切り替える──これが広告で言う「最大○百万円」の中身です。上限に近いケースを大きく見せているだけで、魔法のお金ではありません。
制度の全体図(受給を始めてから辞める手順)は傷病手当金をもらって退職する手順にまとめています。退職後も傷病手当金を受け続ける(継続給付)には条件があります。①退職日まで継続して1年以上の被保険者期間があること、②退職日時点で受給中か受けられる状態であること、③退職日に出勤していないこと。とくに③は有名な地雷で、退職日に挨拶や引き継ぎで出勤すると継続給付の権利が消えます。金額や条件の最終確認は、必ず加入している健保(協会けんぽ等)で行ってください。
なお「限界だけど、まだ在職中」という方は、辞める前に選べる道の整理から始めるのが先です。休職したいけど言い出せない人向けの記事に、私が潰れてから知った順番をまとめています。
なぜ「怪しい」と感じるのか
制度が本物なのに広告が怪しく見えるのには、はっきりした理由があります。
- 「最大○百万円」という表現──条件が揃った上限ケースの数字だけを大きく見せている。あなたがいくらになるかは、給与・加入期間・体調次第でまったく別
- LINE登録への誘導──料金も仕組みも明かさないまま、まずクローズドな場に引き込む構造そのものが不信感を生む
- 仕組みの不透明さ──「何という制度のお金なのか」を説明しない広告が多い。傷病手当金と失業保険だと最初から言えばいいのに、言わない
つまり「怪しい」という直感は、正常な防御反応です。その直感を捨てる必要はなく、次の基準で個別に確かめればいいだけです。
詐欺・悪質業者と見分ける5つの基準
私が調べる中で「これに当てはまったら離れる」と決めた基準が5つあります。
基準1:全額前払いを要求する
受給できるかどうか分からない段階で全額を先に払わせる業者は、受給結果に責任を持つ気がない構造です。後払いや成果連動か、まず確認してください。
基準2:「絶対もらえる」「誰でも対象」と断定する
受給可否を決めるのは健保やハローワークであって、業者ではありません。被保険者期間や退職日の過ごし方ひとつで結果が変わる制度を「絶対」と言い切る時点で、誠実さより営業を優先しています。
基準3:料金体系が不明瞭
「成功報酬○%」の母数は何か、追加費用はあるか、途中解約時はどうなるか。聞いても明確な答えが返ってこないなら、契約後に揉めるのはほぼ確実です。
基準4:特定の診断結果へ誘導する
「この症状で診断書をもらってください」と指示する業者は最も危険です。事実と異なる申請に加担すれば不正受給になり得ますし、リスクを負うのは業者ではなく、あなたです。
「提携クリニックを紹介します」「最短即日で受診できます」と、申請の前段に受診を組み込んでいる業者もあります。受診そのものが悪いわけではありません。ただ、体調ではなく給付金のために受診の段取りが先に決まっている導線なら、それは基準4に当たります。
基準5:会社の実体と、資格者の名前が確認できない
運営会社名・所在地・特定商取引法に基づく表記がサイトで確認できない、検索しても実体が出てこない──この状態でお金と健康情報を預けるべきではありません。
ここは無料で、しかも機械的に確かめられます。国税庁の法人番号公表サイトで会社名を引けば、登記上の商号・所在地・いつ登記されたかが誰でも見られます。サイトが「実績5,000件」と書いていても、登記が去年なら計算が合うのかを自分で検算できます。
そしてもう1つ、私が後から重要だと気づいた軸があります。社会保険労務士の名前と登録番号が出ているかです。
傷病手当金や失業保険の申請書を、報酬を取って代わりに作る・提出を代行する──これは社会保険労務士法27条で、社労士でない人には禁じられています。条文はこうです。「社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない」。その1号・2号が「申請書等を作成すること」「提出に関する手続を代わつてすること」です。
つまり、社労士がいない業者にできるのは書き方を教えることまでで、書類そのものを作ることではありません。ここを曖昧にしたまま「まるごとお任せ」と見せている業者は少なくありません。「弁護士監修」「社労士監修」という言葉にも注意が必要です。監修は、その人が手続きをしてくれるという意味ではありません。名前と登録番号が出ているか、その人が実際に何をするのかまで書かれているかを見てください。
自分で申請できるケース:無料で、健保とハローワークで完結する
大前提として、傷病手当金も失業保険も申請自体にお金はかかりません。傷病手当金の申請書は、本人記入+事業主の証明(在職期間分のみ)+医師の意見書で構成され、退職後の期間分は事業主証明も不要です。失業保険側の手続き(受給期間延長を含む)はハローワークで完結します。
次に当てはまる人は、業者を挟まず自力で進められる可能性が高いです。
- 在職中から準備でき、退職日までの段取り(出勤しない等)を自分で管理できる
- 役所的な書類のやりとりが極端に苦にならない
- 会社に在職分の証明を頼める関係が残っている
分からない点は、加入している健保(協会けんぽ等)に直接電話すれば無料で教えてもらえます。
サポートを使う合理性があるケース
一方で、私は「全員自力でやれ」とも思っていません。自分が潰れたときのことを思い出すと、電話1本かける気力すらない時期は確かにありました。次のような状況なら、お金を払ってでも外部の手を借りる合理性はあります。
- 体力・気力が残っておらず、調べながら進めること自体が無理
- 退職の話を自分で切り出せず、退職そのものから支援が必要(この場合の選択肢は退職代行の比較記事でも整理しています)
- 退職日や書類の段取りでつまずくと取り返しがつかないため、伴走者がほしい
実際に3社を、登記と特商法で調べた
基準を並べるだけでは足りないと思ったので、広告でよく見る3社について、公式サイトの特定商取引法ページと、国税庁の法人番号公表サイトの登記情報を実際に突き合わせました。2026年9月9日時点の記載です。
| サービス | 運営会社(法人番号) | 登記された日 | 社労士の記載 | 料金(税込) |
|---|---|---|---|---|
| POOL BOX | 合同会社POOL BOX (3120003031804) |
2026-01-29 | サイト内になし | 一括16万/分割22万/後払い28万 |
| YELL!! | 合同会社Pay It Forward (1040003027085) |
2025-03-10 | サイト内になし | 一括33万/後から一括44万/分割49.5万+保証金3万 |
| よりみち給付金サポート | 株式会社よりみち (7010001261971) |
2026-01-15 | サイト内になし (弁護士の「監修」表記はあり) |
36万 |
調べて分かったことを3つ書きます。
1つ目。3社とも、サイトに社会保険労務士の名前が出てきません。「社労士」「社会保険労務士」という語をサイト全体で検索して、いずれも0件でした(よりみちは画面がJavaScriptで組まれているため、その中身まで展開して確認しています)。よりみちには弁護士の登録番号(第一東京弁護士会・38698)が明記されていますが、書かれているのは「監修」と「顧問」です。
2つ目。安く見える払い方が、いちばん高いことがあります。POOL BOXは一括16万円に対し、広告が推している後払いが28万円。12万円、率にして75%高いです。「頭金0円」「リスクゼロ」という見せ方からは読み取れません。手元にお金がない人ほど高い方を選ばされる構造なので、契約前に一括といくら違うかを必ず聞いてください。
3つ目。数字は登記の日付と突き合わせられます。POOL BOXは「累計サポート実績5,000件超」「退職給付金申請数1,500件突破」と掲げていますが、登記は2026年1月29日です。7か月で5,000件なら1日22件、1,500件でも1日7件を毎日こなす計算になります。私はこの数字を根拠に判断するのはやめました。
誤解しないでほしいのは、この3社が詐欺だと言っているのではないということです。制度は実在するし、業者を使う合理性がある人もいます。ただ「相談は無料」「後払いでリスクゼロ」という入口の言葉だけで決めると、30万円前後の契約に、書類を作る資格を持った人がいない状態で進むことになります。上の表と同じことは、あなたも無料で確認できます。会社名を法人番号公表サイトで引き、特商法ページで一括払いの額を見る。それだけです。
そのうえで、私が実際に上の基準で見たのはPOOL BOXです。相談は無料で、全額前払いの要求はなく、運営者情報も公開されています。後払いは退職日の2ヶ月後から始まり、同社に不備があった場合の返金保証もあります。使うかどうかを決めるのはあなたですが、費用・支払い時期・返金条件は契約前に必ず確認してください。
「退職給付金」についての注意事項
- 本記事でいう「退職給付金」は、傷病手当・失業手当・再就職支援手当の3つの制度をまとめた総称です。
- これらの制度は、社会保険と雇用保険に加入して働いている方に限りご利用いただけます。
- 受給できるかどうかや金額には個人差があり、受給を保証するものではありません。
- 心身の不調やストレスなどで就労が難しい方が対象です。
不正受給は絶対にしない
最後に、これだけは線を引いておきます。事実と異なる内容で申請すれば不正受給です。発覚すれば受け取ったお金の返還にとどまらず、ペナルティの対象になり得ます。「こう書けば通る」「この症状だと言ってください」と誘導してくる業者に出会ったら、得をする話ではなく、あなただけがリスクを背負う話です。その場で離れてください。
体調を理由に辞めることに罪悪感を持つ人ほど、この線を踏み越えたくなる誘いに弱くなります。罪悪感との向き合い方は「うつで退職はずるいのか」という記事に書きましたが、正規の手続きで受け取るお金に、後ろめたさは一切要りません。
困ったときの公的窓口
制度のこと、業者とのトラブル、どちらも無料で相談できる公的窓口があります。迷ったらまずここへ。
- 傷病手当金の条件・金額の確認:全国健康保険協会(協会けんぽ)(健保組合の方は加入先の組合へ)
- 失業保険・受給期間延長:ハローワークインターネットサービス
- 退職をめぐる会社とのトラブル:総合労働相談コーナー(厚生労働省)
- サポート業者との契約トラブル・「詐欺かも」と思ったとき:消費者ホットライン188に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります
「怪しい」と感じる感覚は、捨てなくていいです。その感覚のまま、制度は制度として正しく使い、業者は基準で選別しましょう。潰れてから調べた私が言えるのは、それがいちばん損をしない順番だ、ということです。

