私はFXで268万円を失った。
2019年に192万円、2020年に76万円。確定申告の「先物取引に係る雑所得等」の欄に、はっきりと記載されている数字だ。「FXは危険」という言葉は、ネット上にいくらでも転がっている。でも私がこの記事で伝えたいのは、そういう一般論ではない。実際に268万円を溶かし、500万円の借金を背負い、人生の軌道を大きく外れた人間のリアルな記録だ。
FXは、人生を狂わせかねない危険な取引である。これは理論でも一般論でもなく、私自身の体験から出た言葉だ。この記事が、これからFXを始めようとしている人、あるいは今まさに泥沼にはまりかけている人の「やめる判断材料」になれば、268万円の授業料にも少しは意味があったと思える。
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FXで借金地獄に落ちた私の話
私のFX歴は、2019年から2020年の約2年間だ。主に取引していたのはGBP/USD、いわゆる「ポンドル」。値動きが大きく、短期間で大きな利益を狙える通貨ペアだと思っていた。裏を返せば、それだけ損失も大きくなるということを、身をもって知ることになる。
当時の私は「もちぽよアラート」というサインツールに頼り切っていた。アラートが鳴ったらエントリー、利確ポイントが来たら決済。自分の頭で考えず、ツールの指示に従うだけのトレードだった。最初は勝てた。だから「これで行ける」と思い込んだ。しかし相場環境が変われば、どんなツールも通用しなくなる。そんな当たり前のことに気づいた頃には、損失は100万円を超えていた。
さらに愚かだったのは、LINEのFXトレードグループに入り浸り、他人のエントリーポイントを真似していたことだ。自分で相場を分析する力がないまま、「誰かについていけば勝てる」と思っていた。結果は惨敗だった。
極めつけは、FXコンサル詐欺に20万円を払ったことだ。「月収100万円のプロトレーダーが直接指導」という謳い文句に引っかかった。中身は、ネットで拾えるレベルの基礎知識を高額で売りつけるだけのものだった。詳しくは別記事に書いている。
FXの損失268万円、コンサル詐欺20万円。そして2020年にコロナ融資として借り入れた資金と合わせ、私の借金は500万円に膨らんだ。30代半ばにして、債務超過の状態に陥った。
やってはいけないこと【心理面】
(1)「自分は特別」と思うな
FXを始めた頃、私は本気で「自分なら勝てる」と思っていた。IT系の仕事をしていたし、数字にも強いつもりだった。チャート分析の本を何冊か読んで、テクニカル指標の名前を覚えたら、もう一端のトレーダー気分だった。
しかし、FXで継続的に利益を出せる個人トレーダーは全体の1割程度と言われている。9割の側に入る確率のほうが圧倒的に高い。私は「自分は1割に入れる」と信じていた。そして9割の側に落ちた。知識があることと、実際の相場で冷静に判断できることは、まったく別の能力だ。
(2)「楽に稼げる」は幻想
「スマホ1つで月収50万」「1日30分で副収入」。FX界隈にはこういう煽り文句が溢れている。私自身、こうした言葉に引き寄せられた一人だ。もちぽよアラートを使えばシグナル通りにポチポチするだけ。LINEグループの先輩トレーダーの真似をすればいい。実際にはそんな楽な話は存在しなかった。
「楽に稼げる」という言葉が出てきたら、それは詐欺か、あなたの損失で儲ける側の人間の発言だ。FXに近道はない。近道があると思った瞬間が、転落の始まりだった。
(3)「絶対」を信じるな
SNSには「絶対勝てる手法」「必勝パターン」を謳う自称プロトレーダーが山ほどいる。私が入っていたLINEグループにも、毎日のように「ここでロング、絶対上がる」「ショート確定」と断言する人がいた。
相場に「絶対」は存在しない。もし本当に絶対勝てる手法があるなら、その人はSNSで情報発信する必要がない。黙って自分で取引すれば無限に儲かるはずだ。「絶対」という言葉を使う人間は、あなたから何かを搾取しようとしている。コンサル料、サロン会費、アフィリエイト報酬。搾取の形は様々だが、構造は同じだ。
(4)「取り返そう」と思った時点で負け
2019年の前半で50万円ほど負けた時、私は冷静さを完全に失っていた。「あと50万円取り返せば元に戻る」。そう思ってロットを上げた。証拠金30万円に対して1ロット(10万通貨)を張るような無謀なトレードを繰り返した。
結果、損失は50万円から192万円に膨らんだ。「取り返す」ためのトレードは、冷静な分析に基づいていない。感情に支配された賭けだ。カジノで負けた客が「次こそ取り返す」と言ってテーブルに戻るのと何も変わらない。損失が出た時点で一度離れる。それができなかった私は、傷口を4倍に広げた。
やってはいけないこと【行動面】
(1) 資金管理を甘く見るな
FXで最も重要なのは手法ではなく資金管理だ、と多くの書籍に書いてある。私もその言葉は知っていた。知っていたが、実践できなかった。
証拠金30万円に対して1ロット(10万通貨)のポジションを取る。ポンドルで1ロットなら、1pips動くだけで約1,300円の損益が出る。30pips逆行すれば約4万円。100pips逆行すれば約13万円。証拠金の半分近くが吹き飛ぶ計算だ。それなのに「ここは自信がある」という根拠のない確信でポジションを取り続けた。資金管理の甘さは、相場ではなく自分自身が招いた破滅だった。
(2) 自分のルールを破るな
「マイナス20pipsで損切り」。トレードを始める前に、毎回そう決めていた。しかし実際に含み損が20pipsに達すると、「もう少し待てば戻るかもしれない」と思ってしまう。結局損切りラインを30pips、50pips、100pipsとずるずる下げていき、最終的には強制ロスカットまで持ち続けることもあった。
自分で決めたルールを自分で破る。これを繰り返すうちに、ルールを設定すること自体が無意味になっていった。ルールを守れない人間はFXをやるべきではない。そして私のように、ADHDの衝動性を抱えている人間は、ルールを守ることが構造的に難しい。
(3) 海外FX業者を使うな
国内FX業者のレバレッジは最大25倍に規制されている。それでも十分危険だが、海外業者なら100倍、500倍、中には1000倍というレバレッジが使える。少ない証拠金で大きなポジションが取れるから、一発逆転を狙いたくなる。
さらに危険なのは、海外業者の多くがクレジットカード入金に対応していることだ。手元に現金がなくても、カードで入金してトレードできる。負ければそれはそのままカードの借金になる。私の周囲にも、海外FXへのカード入金がきっかけで多重債務に陥った人がいた。高レバレッジと簡単な入金手段の組み合わせは、破滅への最短ルートだ。
(4) SNS詐欺に引っかかるな
私はFXコンサル詐欺で20万円を失った。TwitterのDMで知り合った「月収100万円トレーダー」に、個別指導を持ちかけられた。最初は無料で相場の見方を教えてくれた。信頼関係ができた頃に「本格的に学びたいなら」と有料コンサルを勧められ、20万円を振り込んだ。
送られてきたのは、YouTubeの無料動画レベルの内容をまとめたPDFと、週1回のLINE通話だった。質問しても「それは自分で検証してください」の一点張り。2ヶ月で連絡が途絶えた。FXで268万円を失い、さらに詐欺で20万円を上乗せされた。冷静に考えれば怪しいと分かるはずだが、「この人について行けば勝てるかもしれない」という藁にもすがる心理が判断力を鈍らせる。
ADHDの人は、特にFXをやるべきではない
私にはADHDがある。そしてADHDの特性は、FXにおいて致命的に不利に働く。これは精神論ではなく、脳の構造の問題だ。
まず、衝動的なエントリー。チャートが動いているのを見ると「今入らなきゃ」という焦りが湧く。分析が不十分なまま、衝動でポジションを取ってしまう。ADHDの人間にとって「待つ」という行為は、想像以上にエネルギーを消耗する。
次に、損切りの先延ばし。ADHDには「嫌なことを先延ばしにする」傾向がある。含み損を確定させるという不快な行為を、ギリギリまで避けてしまう。「明日になれば戻るかもしれない」と問題を先送りし、傷口が広がる。
そして、新しい手法への飛びつき。ADHDは新しい刺激に強く反応する。「この手法なら勝てる」という情報を見つけるたびに飛びつき、検証もそこそこに実トレードで試す。一つの手法を地道に磨く忍耐力が続かない。
何より危険なのは、チャートの値動き自体がドーパミンの供給源になることだ。上がった、下がった、利益が出た、損失が出た。この刺激の連続は、ADHDの脳にとって強烈な報酬になる。構造的にはギャンブル依存と同じだ。私はFXをやめた後、パチンコにも競馬にも手を出していないが、チャートを見ていた時のあの興奮は、明らかに依存の一種だったと今なら分かる。
それでもFXを始めたいなら
ここまで読んで、それでもFXをやりたいという人に向けて書く。止めはしない。ただし、以下の手順を踏んでからにしてほしい。
まず、過去チャートの検証を最低100回やること。自分が使おうとしている手法が、過去の相場でどれだけ機能したかを確認する。1回も実トレードをせずに、ひたすら検証だけをやる。これが退屈で続かないなら、FXは向いていない。
次に、デモトレードで3ヶ月間の成績をつけること。デモ口座なら損失は出ない。3ヶ月間トータルで黒字にできなければ、リアルマネーを入れても負ける。デモで勝てない人間がリアルで勝てるわけがない。
そして、実トレードに移行する場合は「失っても生活に一切影響しない金額」だけを使うこと。生活費、貯蓄、借金で作った金は絶対に入れるな。「これを失ったら困る」と思う金額なら、それはもうFXに使っていい金ではない。
最後に、最も大事なことを言う。「FXをやらない」という選択が、最善の選択肢であることは十分にあり得る。やらなければ268万円を失うこともなかった。やらなければ500万円の借金を背負うこともなかった。「やらない勇気」は、臆病ではなく賢明だ。
関連記事:FXはやめたほうがいい、海外FXは危険すぎる
FXで借金を抱えてしまったら
もし今、FXの損失で借金を抱えているなら、一つだけ伝えたいことがある。一人で抱え込まないでほしい。
私自身、500万円の借金を背負った時、誰にも相談できなかった。恥ずかしかったし、自業自得だと思っていたからだ。しかし借金の問題には、任意整理や個人再生といった法的な解決手段がある。これらは「逃げ」ではなく、法律で認められた正当な手続きだ。
弁護士や司法書士への無料相談から始められる。「自分の借金額ではたいしたことない」「まだ何とかなる」と思っているうちに、利息が膨らんで手遅れになるケースは多い。早ければ早いほど、選択肢は広がる。
私自身、今も500万円の借金と向き合っている最中だ。完済の目処が立っているわけではない。それでも、問題を直視し、専門家の力を借りながら一歩ずつ進んでいる。借金は恥ではない。放置することが、本当の問題だ。
公的な相談窓口としては、法テラス(0570-078374)がある。電話一本で、借金問題に詳しい弁護士や司法書士を紹介してもらえる。
具体的には、弁護士法人ちらいふくや司法書士法人ホワイトリーガルなどの事務所が無料相談に対応している。電話やオンラインで予約できるので、まずは話を聞いてもらうだけでもいい。
この記事は個人の体験に基づくものであり、投資助言を目的としたものではありません。FX取引には元本を超える損失が生じるリスクがあります。借金問題でお困りの方は、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。

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