ポンドルに出会った瞬間のことを、今でも覚えている。
GBP/USD。英ポンドと米ドルの通貨ペア。FXトレーダーの間では「ポンドル」と呼ばれている。チャートを初めて見た時、他の通貨ペアにはない「うねり」のようなものを感じた。大きく動く。綺麗に動く。テクニカルが効きやすいと言われている。全部本当だった。そして、その全てを理解した上で、私は192万円を失った。
この記事は、ポンドルの攻略法を教えるものではない。かつてこの場所に、私自身がそういう記事を書いていた。ロンパチの値動き、ロンフィク後のショート戦略、時間帯別のエントリーポイント。全て本気で書いた。そして全て、自分自身が実行できなかった。
なぜポンドルを選んだのか
FXを始めた当初、ドル円やユーロドルも見ていた。でもすぐにポンドルに惹かれた。理由は単純で、値動きが大きいからだ。
ドル円が1日に50pips動く日に、ポンドルは100pips以上動くことがある。10万通貨で100pips取れれば、1日で10万円以上の利益になる。計算するだけで興奮した。ボラティリティが大きい通貨ペアは、短時間で大きく稼げる可能性がある。その「可能性」の部分だけを見て、「同じだけ失う可能性」には目を向けなかった。
もう一つの理由は、SNSやネットで見かけた「ポンドル攻略法」の情報だった。ポンド戦士と呼ばれるトレーダーたちがポンドルで勝っているなら、自分も同じ通貨ペアで勝てるはずだ。そう信じた。後年(2024年以降)になってから「もちぽよアラート」というシグナルツールにも手を出すことになるが、それは別の話だ。
さらに、LINEの「ポンドルFX部屋」にも入っていた。ポンドルを主戦場にするトレーダーたちが集まるグループで、リアルタイムでエントリー情報を共有したり、チャートの見立てを議論したりする場だった。仲間がいるという安心感があった。みんなが同じ通貨ペアを見ている。みんなが同じ方向を見ている。だから自分も大丈夫だ、と。
今振り返ると、全てが「自分で考えないための環境」を整えていただけだった。
ポンドルの値動きの特徴 ── これは本当だった
ここで一つ断っておきたい。ポンドルの値動きに関する私の知識は、間違っていなかった。テクニカル分析の理解は、むしろ正確だったと思う。問題は、知識があることと利益を出せることが全く別の話だということだった。
ポンドルが最も動くのは、ロンドン市場の開場前後だ。とりわけ「ロンパチ」と呼ばれるロンドン午前8時(日本時間で夏は16時、冬は17時)前後は、1日の中で最大のボラティリティが発生する。ロンドンの機関投資家が動き出す時間帯で、方向感が一気に出る。
その後、ニューヨーク市場が開く日本時間22時半(冬は23時半)頃から再び値動きが活発になる。そして「ロンフィク」、ロンドン市場の閉場時間(日本時間で夏は翌0時、冬は1時)に向けてもう一段動いた後、沈静化する。
特徴的なのは、ロンドン時間にポンドが買われ、ニューヨーク時間にドルが買われる(つまりポンドルが下がる)傾向があることだ。自国市場がオープンしている時間帯に、その国の通貨が強くなりやすい。英米は大西洋を挟んで時差があり、開場時間がタスキのように引き継がれるため、この傾向が顕著に出る。
チャートの形も綺麗だった。三尊、ダブルトップ、グランビルの法則。教科書に載っているパターンが、ポンドルでは比較的忠実に出現する。高値・安値の更新がトレンド継続を素直に示すことが多く、ダウ理論が機能しやすい通貨ペアだと感じていた。
これらの知識は、全て正しい。少なくとも、相場の傾向としては間違っていない。問題は、この正しい知識が、実際のトレードでは何の役にも立たなかったということだ。
知識があっても勝てなかった理由
「ロンパチでポンドルが上がりやすい」。知っている。「ロンフィク後はショートが有利」。知っている。「高値更新でトレンド継続」。知っている。全部知っていて、全部できなかった。
ロンパチ前にチャートを開く。ここまでは計画通りだ。しかし、ロンドン開場の30分前にポンドルが急落し始めると、頭が真っ白になる。「これはロンパチ前の騙し下げか、それとも本当の下落か」。理屈ではわかっている。でも、含み益が消えていく画面を見ながら冷静に判断するのは、教科書を読むのとは全く違う作業だった。
ロンフィク後のショート戦略も同じだ。「ロンフィク後にポンドルが下がりやすい」と知っている。実際に下がることも多い。でも、ショートでエントリーした直後にポンドルが跳ね上がると、「今日は例外の日かもしれない」と思ってすぐに損切りしてしまう。その後、予想通り下がり始める。しかしもう、ポジションは持っていない。
後からチャートを見返すと、自分の見立ては合っていた。エントリーのタイミングも悪くなかった。それなのに負けている。知識の問題ではなく、心理の問題だった。そして、私は後にADHDの診断を受けることになるのだが、この「わかっているのにできない」という症状は、ADHDの衝動性や感情制御の困難さと密接に関係していた。(詳しくは「FXやめとけ」は本当だった|268万円失った私が断言する理由で書いている。)
ボラティリティは両刃の剣だった
ポンドルを選んだ最大の理由は、ボラティリティの大きさだった。大きく動くから、大きく稼げる。それは事実だ。しかし、大きく動くということは、大きく負けるということでもある。当たり前のことだが、実際に体験するまでは本当の意味で理解できなかった。
ドル円なら数千円の損失で済む値動きが、ポンドルでは数万円になる。1週間かけてコツコツ積み上げた利益が、ポンドルの急変動で数分で消える。それどころか、利益どころかマイナスに転落する。
特に怖かったのは、指標発表時やBrexit関連のニュースが出た時だ。ポンドルは政治的なニュースに極端に反応する。2019年当時はBrexitの交渉が続いており、ヘッドラインが出るたびにポンドルが乱高下した。テクニカル分析が通用しない相場だった。「綺麗なチャート」「教科書通りの値動き」は、平時の話だ。ニュースが出た瞬間、全てが吹き飛ぶ。
2019年の192万円の損失の多くは、このボラティリティに殺された結果だ。大きく取れる日もあった。しかし、大きく取れた日の利益は、1回の大負けで全て消えた。そしてその大負けの後に、取り返そうとしてロットを上げ、さらに大きく負ける。この悪循環が止まらなかった。
FXに攻略法などなかった ── 破産しかけた末路
かつてこの記事には、ポンドルの攻略法を書いていた。ロンパチの値動きを利用したエントリー手法、ロンフィク後のショート戦略、RCIとMACDのダイバージェンスを組み合わせた判断基準。全て、自分では実行できなかったものだ。
後年使うことになる「もちぽよアラート」のようなシグナルツールも、攻略法ではなかった。ツールのシグナルに従っていれば勝てる時期もあるが、相場環境が変わればシグナルの精度は落ちる。そしてシグナルが外れ始めた時に、ツールを信じ続けるのか、自分の判断で上書きするのか、その判断を下す能力が私にはなかった。
LINEのポンドルFX部屋も攻略法ではなかった。みんなで同じ通貨ペアを見て、同じ方向にエントリーして、同じように負けた。「ここはロングだと思う」という誰かの発言を根拠にエントリーして、その人も自分も負ける。集団で相場に挑んでも、結局は一人ひとりが自分の画面で自分の判断をしなければならない。仲間がいることは心理的な支えにはなるが、勝てるかどうかとは関係がなかった。
ポンドルに「攻略法」は存在しない。どの通貨ペアにも存在しない。もし存在するとしたら、それは「やらないこと」だったのだと思う。
2019年に192万円、2020年に76万円。合計268万円の損失は全て確定申告書に記載されている。先物取引に係る雑所得等の欄に並ぶマイナスの数字を見るたびに思う。あの時間とあの金で、他に何ができただろうか。
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FXの損失で借金を抱えてしまった方へ
FXの損失がきっかけで借金を抱えてしまう人は少なくない。損失を取り返そうとして消費者金融に手を出す人、生活費が足りなくなってカードローンで補填する人。私自身、FXの損失とコロナ禍での事業不振が重なり、最終的に500万円の借金を抱えることになった。
借金の金額が膨らんでくると、一人で考えているだけでは解決の糸口が見えなくなる。任意整理や個人再生といった法的な手続きで、月々の返済額を減らせる可能性がある。弁護士や司法書士への相談は無料で受け付けている事務所が多い。相談したからといってすぐに手続きが始まるわけではなく、まずは自分の状況を整理して、どんな選択肢があるかを知るだけでも、見える景色は変わってくる。
自分で動けないときは、法テラス(0570-078374)に電話するだけでいい。状況に合った専門家を紹介してもらえる。
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この記事は個人の体験に基づくものであり、投資助言や専門的なアドバイスではありません。FX取引は元本割れのリスクがあり、損失額が証拠金を上回る可能性があります。通貨ペアの値動きに関する記述は筆者個人の見解であり、将来の値動きを保証するものではありません。借金問題については弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
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