ADHDフリーランスが5年で崩壊した話|年商500万から借金生活へ

5年間、年商500万円を維持し続けた。フリーランスとしては悪くない数字だと思う。

だが最終的に崩壊した。心身を壊したわけではない。お金が尽きたのだ。撤退方法とコスト管理さえ間違えなければ存続できた線はある。だが間違えた。ADHDの特性が、じわじわと判断を狂わせていった。

目次

正社員Webディレクターが一瞬で詰んだ

フリーランスになる前、正社員としてWebディレクターをやっていた。結論から言うと、一度も楽しいと思ったことがない。やりがいも感じなかった。毎日が生存競争だった。

マルチタスク、スケジュール管理、対人調整——全てADHDの弱点に直撃する業務だ。納期を飛ばし、確認漏れでトラブルを起こし、ある日会議室に呼ばれた。先輩とデザイナー3人、計4人が待っていた。全員から同時に詰められた。「なんで確認しなかったの?」「これ3回目だよね?」「どうするつもりなの?」。対人恐怖がどんどん悪化していった。

すぐに辞めた。次の仕事を決めずに辞めた。ADHDの衝動性による退職。計画など何もなかった。「もうここにいたら死ぬ」という感覚だけで飛び出した。

フリーランス——ADHDにとっての楽園が始まった

辞めた後、Webメディアの運営を始めた。先行者利益を掴めるトレンド系のジャンルを見つけ、広告収入で年商500万円。5年連続で維持した。

昼夜逆転していたが、それでも勝てた。自分の鋳型で固めた生活——朝は好きなだけ寝て、夜中に集中して作業し、好きな時に好きなことをやる。誰にも怒られない。報告義務もない。会議もない。ADHDにとっての楽園そのものだった。

「自分は会社員に向いていなかっただけで、一人でやれば成功できる人間なんだ」と本気で思っていた。5年間、その確信は揺るがなかった。揺るがなかったからこそ、変化に対応できなかった。

「先行者利益の賞味期限」を完全に見誤った

先行者利益型のビジネスには必ず賞味期限がある。競合が増え、プラットフォームのアルゴリズムが変わり、市場が成熟する。これは誰でも知っている。知っていてもADHDの脳は「今うまくいっていることを変える」判断ができなかった。

Googleのアップデートと競合の増加で、収益が減り始めた。ピークは2022年。そこから坂を転げ落ちるように数字が下がった。

本来なら、稼げているうちに次の収益源を仕込むべきだった。事業転換のタイミングは何度もあった。だがADHDの「変化を嫌う(現状維持バイアスの強化版)」と「将来の危機を具体的にイメージできない」特性が完璧に邪魔をした。「まだ大丈夫だろう」「なんとかなるだろう」。なんともならなかった。

固定費20万を下げられなかった——ADHDの生活水準固着

収益が減り始めた時、真っ先に削るべきだったのは固定費だ。タワマンから出て、家賃5万のワンルームに移ればよかった。それだけで月15万の余裕が生まれる。

だがADHDの脳は「生活レベルを下げる」判断が極端に苦手だ。一度上げた水準は「普通」になる。下げることに脳が強烈に抵抗する。「来月には収益が戻るかもしれない」「引っ越しは面倒だ」「今のこの環境が自分の創造性に必要だ」——全て自己正当化だった。

結果、売上が月に数万円まで落ち込む中で固定費20万だけが高止まりし、コロナ融資の500万がじわじわ削られていった。FXで取り返そうとして268万溶かしたのもこの時期だ。全てが同時に崩壊した。

崩壊——「フリーランス終了」の日

フリーランスが終わったのは、心が折れた日ではない。翌月の口座残高見通しがマイナスになった日だ。

入ってくる金より出ていく金が多い。売上は月数万円に落ち込み、融資の残高はFXで溶かした分を含めてほぼゼロ。返済は毎月やってくる。数字の帳尻が物理的に合わなくなった。

「あぁ、これはもう無理だな」と思った時、怒りも悲しみもなかった。静かな諦めだった。5年間続いた楽園は終わった。ADHDの自分にとって唯一合っていた働き方が、コスト管理の失敗で消滅した。

単発バイト地獄からIT派遣へ

フリーランス崩壊後、単発バイトをやりまくった。倉庫の仕分け、イベント設営、引っ越し手伝い。日給8,000円。体力的にきつく、単価が低すぎて返済に回す余裕がない。「これを何年続ければ借金が返せるんだ」と絶望した。

ある日、インスタグラムの広告でIT特化型の派遣会社を見つけた。Web系の実務経験が5年ある。工場バイトより単価が取れるかもしれないと思い、登録した。

だが20社くらい落ちた。ブランクがあること、フリーランス時代の経歴をどう説明すればいいか分からなかったこと、面接でうまく話せないこと。全部重なって連敗した。

だが短期募集の外資系案件に、たまたま拾ってもらえた。3ヶ月の契約が延長され、結局1年以上続いている。月20万。フリーランス時代の半分以下だが、安定している。今はこの収入で借金を返しながら、このブログを育てている。

ADHDフリーランスが崩壊を防ぐために必要だったこと

  • 固定費を収入の3割以下に抑える(月50万売上なら家賃15万が限界。20万は論外だった)
  • 事業資金と生活費の口座を物理的に分離する(同じ口座は絶対NG)
  • 「今のビジネスが3年後に死ぬ」前提で次の収益源を並行して仕込む
  • 稼げている時に半年分の生活費を引き出せない口座に退避させる
  • FXやギャンブルで「取り返す」発想を完全に捨てる。それは衝動だ。

全部ADHDが苦手とすることだ。だが仕組みで強制すれば不可能ではない。自動振替、定期預金、固定費の見直しリマインダー(毎月1日にスマホ通知)。ADHDの脳を信用せず、外部システムに委ねる。それしか道はない。

それでも、フリーランスを選んだことは後悔していない

こう書くと「ADHDはフリーランスに向いていない」という結論に聞こえるかもしれない。だが正社員時代の方が精神的に死んでいた。会議室で4人に詰められていた日々に比べれば、借金がある今の方がまだ人間として生きている実感がある。

ADHDにとって「自分のペースで働ける環境」は間違いなく価値がある。問題は環境ではなく、コスト管理と撤退判断だった。次にフリーランスに戻る機会があるなら——固定費5万円以下、貯金200万確保、事業転換のデッドラインを初日に設定する。同じ失敗は二度としない。

FAQ

ADHDでもフリーランスを続けている人のコツは?

私の失敗から逆算すると、「固定費を最小にする」「口座を分ける」「事業の賞味期限を最初に設定する」の3つだ。稼げている時に生活を膨らませないこと、事業資金を生活費と混ぜないこと、「このビジネスが死んだ時どうするか」を好調な時に決めておくこと。好調な時ほど、この判断から目を背けたくなる。だからこそ初日に決める。

フリーランスから会社員に戻るのは恥ずかしいこと?

全く恥ずかしくない。私は20社落ちて、外資の短期案件に拾ってもらった。面接では「フリーランスで5年やったが収益が安定しなくなり、安定した環境で力を発揮したい」と正直に話した。変にフリーランス時代を美化するより、正直に話した方が信頼される。実務経験があるなら必ずどこかが拾ってくれる。


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この記事を書いた人

宮瀬圭介(みやせ けいすけ)

ADHD診断済みの30代男性。FXで268万円の損失、借金500万円からの生活再建中。 プロフィール詳細 →

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この記事を書いた人

ADHD診断済みの30代男性。FXで268万円の損失、借金500万円からの生活再建中。機能不全家族・ADHD・借金について当事者視点で発信しています。

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